愛と幸せの妖精
.
.
.
ぷりんてぃ
んまじかる☆
.
.
.
.
エンジェ
ルズ.
プロロ︱
グ.
町に夜のとばりが降りていた
。
.
家に急ぐ人々
、
.
帰りにちょ
っ
とファ
︱
ストフ︱
ドで寄り道をしていこうと考えて
いる女子学生
、
.
子供をつれて、
おそい買い物をした帰りの
主婦
・
・
・
そのほかにも
、
さまざまな人々
が駅前の繁華街にはあふ
れていた
。
.
まさに、
その繁華街の中
、
ふいに甲高い悲鳴が響きわたる
。
.
若い女性の声。
﹁
やめて・
・
・
やめてください
!
﹂
.
ざわっ
と、
通りを行き交う人
々
の流れがとま
っ
た。
誰もがその声の主を目で探す
。
.
すぐに分かっ
た。
.
一人のセ︱
ラ服を着た
、
女子高校生とおぼしき女の子が
、
柄の悪い
、
若い男性二人にからまれている
。
.
若い男性二人︱
︱
サラリ
︱
マンには見えない
。
ならばヤクザ・
・
・
それともちがう。
むしろ
、
ふだんから町をふらついている
、
たちの悪いチンピラ
、
といっ
たところだろう。
.
時間はまだ早いというのに
、
すでに二人とも
、
しとどに酔っ
ているようである
。
﹁
へっ
、
へっ
、
おねえち
ゃ
ん、
それはないんじ
ゃ
ないのぉ
﹂
﹁
ぶ、
ぶつかっ
てきたのは
、
ね、
ねえちゃ
んの方からなんだな
、
うん
﹂
﹁
ち、
ちがいます、
そんな
﹂
.
ドン、
とチンピラの一人
、
やせて背の高い方の男が
、
女の子の肩を押し
、
後ろの壁にたたきつける
。
﹁
なんだとぉ
、
.
.
.
.
.
こらぁ
﹂
﹁
あ、
あにきを、
お、
怒らせると
・
・
・
こ、
怖いんだな
、
うん﹂
.
ふとっ
たチビのチンピラは
、
にたっ
と笑っ
た
。
.
ザワザワ、
ザワザワ、
と遠巻きにその様子を
ながめる人
々
。
通りの端で
、
若い女の子が男どもにからまれている
、
なんとかしなければ
、
と思いつつも
、
まきぞえを恐れて
、
誰も声をあげることができない
。
.
誰もが、
おろおろ、
おろおろ
、
としながら、
ただ
、
眺めていることしかできない
。
.
ヒソヒソ、
ヒソヒソ、
とした声だけがひ
っ
そりと飛び交
っ
ていた。
﹁
お、
おい、
あれ、
やばいんじ
ゃ
ないの﹂
﹁
だ、
誰か・
・
・
誰か警察よべよ
﹂
﹁
やばいっ
て、
あれ﹂
﹁
あ、
あいつら、
酔っ
てるぞ
﹂
﹁
ねぇ
、
ママ、
あのおねえち
ゃ
ん、
どうしたの
?
﹂
﹁
しっ
、
見るんじゃ
ありません
﹂
.
女子学生の顔は青ざめている
。
.
手が、
肩が、
胸が、
足が
、
体全体が小刻みに震えている
。
﹁
す、
すみません。
ご、
ごめんな
・
・
・
﹂
﹁
ごめんで済めばぁ
、
こら
ぁ
﹂
.
背の高いチンピラは声をはりあげた
。
﹁
警察はいらんのよ
、
おぉ
﹂
﹁
あ、
あにき、
頭いいな
。
こ、
ことわざ、
い、
い
っ
ぱい知っ
てるんだな
。
と、
得意なんだな、
うん
﹂
﹁
ふっ
﹂
.
男は笑っ
た。
﹁
あんまり
、
ほめるんじゃ
ねぇ
よ、
サブ﹂
﹁
あ、
あにき、
かっ
、
か
っ
こいいんだな﹂
.
女の子は通学カバンを胸にぎ
ゅ
っ
と抱き、
ガタガタ
、
ガタガタ、
と震えている
。
﹁
ゆ、
.
.
ゆるして・
・
・
﹂
﹁
あ、
あにき﹂
.
ふとっ
たチンピラはあにきを振り返
っ
た。
﹁
ぼ、
ぼく、
もお、
がまんできないんだな
、
こ
、
この娘、
と、
とっ
てもかわいいんだな
﹂
﹁
い、
いやぁ
ぁ
ぁ
ぁ
﹂
.
通りにいた人々
はただ遠巻きにながめてい
ることしかできなか
っ
た
。
.
どんどんと悪いほうへと進んでいく事態に
、
青ざめている人
々
もいる
。
.
誰もが、
目の前の光景に目をうばわれてい
た
。
.
だから!
.
通りの反対側のデパ︱
トの屋上に三人の人影が現れたことに
、
誰もが気づかなか
っ
た。
﹁
おまちなさい!
﹂
.
突然・
・
・
突然、
あたりに声が響き渡
っ
た。
三人の少女たちの声
。
﹁
えっ
?
﹂
.
誰もが、
きょ
ろきょ
ろ
、
きょ
ろきょ
ろと辺りを見回した
。
.
最初に気づいたのは、
母親に手を引かれた男
の子だ
っ
た。
﹁
あっ
!
﹂
.
男の子はデパ︱
トの屋上を指さした
。
﹁
あ、
あれ
!
﹂
.
二人のチンピラも、
女子高校生も
、
通りにいた誰もがデパ
︱
トの屋上へと
、
ばっ
、
ばばっ
、
と目を向けた。
.
ザワザワ、
ザワザワ、
とした人
々
の声。
﹁
なんだ?
﹂
﹁
な、
なんだ、
あれは?
﹂
.
指さした男の子は、
ぴ
ょ
ん、
と跳びはね、
にこ
っ
と笑っ
た。
﹁
やっ
た︱
、
.
まじかる☆.
.
.
エンジェ
ルズ﹂
﹁
えいっ
!
﹂
.
デパ︱
トの屋上から三人の人影が
︱
︱
三人の少女たちがふいに飛
び降りた
。
.
くるくる、
くるくる、
と膝をかかえ
、
くるくる
、
くるくる、
と前回りに回転しながら
。
屋上から地上までは三十
メ
︱
トルはゆうにある。
﹁
きゃ
あ﹂
﹁
わぁ
﹂
﹁
うわぁ
﹂
.
ざわめく人々
。
.
少女たちは一直線に地上へと落ちてくる
。
途中で
、
すっ
と体が伸び
、
足から地上へと、
さ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
と
、
まっ
すぐに。
.
まっ
すぐに三本の矢とな
っ
た。
.
多くの人々
が思わず、
手で目をおお
っ
た。
.
地上へとたたきつけられる少女たちの凄惨
な姿がまぶたに浮かび
、
思わず多くの人
々
が目をおお
っ
た。
.
だが・
・
・
.
だが、
後一メ︱
トルほどのところで
、
少女たちの体はふわ
っ
と宙に浮かび
、
そのままゆっ
くりと地上へと降り立
っ
た。
.
響き渡る歓声!
﹁
おぉ
﹂
﹁
おおぉ
﹂
﹁
おおおおおおおおおお
ぉ
!
﹂
.
わっ
と声が上がっ
た。
.
三人の少女たちは色とりどりの衣裳に身を
包んでいた
。
.
ひらひらとした、
ふわ
っ
としたピンクの袖口
、
黄色の袖口、
青い袖口
。
.
背中には天使を思わせる小さな純白の羽
。
.
髪の色も、
金髪や、
うすい青みがか
っ
た色や
、
赤っ
ぽいラメの入っ
た髪など、
さまざまであ
っ
た。
.
頭の両側に小さな髪留めを付け
、
そこから細く長い髪が左右にさ
あ
っ
と流れ落ちている娘
、
まん中に大きなリボンをつけている娘
、
一つにまとめた長い髪
をずわ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
とワイルドにたなびかせて
いる娘もいる
。
.
だが、
共通しているのは
、
その左右ともにハ
︱
トの形の胸当て。
左右それぞれのハ
︱
トが胸のまん中でふれ合
い
、
不思議な形を作り上げている
。
.
そして、
.
・
・
・
手にはスティ
ッ
ク。
スティ
ッ
クの先には二つのハ
︱
トが水平に交わ
っ
ている。
.
誰もが少女たちに注意をうばわれ
、
気づかなか
っ
たが、
三人のすぐわきの空中には
、
ハ︱
ト二つの胸当てとよく似た形の
、
色とりどりの小さな妖精たちが
、
ち
ょ
うど少女たちと同じ数だけ
、
ふわふわと浮かんでいた
。
.
少女たちは、
まん中の金髪の少女を中心に
、
ば
っ
と顔を上げた。
ふわ
っ
と髪が浮き上がり、
さら
っ
と流れ落ちる。
.
風にさらさらと揺れる髪
。
.
三人はさっ
とスティ
ッ
クを上へとかかげた。
先頭のハ
︱
トがきらっ
と光をはなつ
。
﹁
愛の妖精ぷりんてぃ
ん
、
から力をさずかっ
た
・
・
・
﹂
.
ふっ
と足をひらき、
.
すっ
と反対の手を脇へとのばす
。
﹁
愛のまじかる☆.
.
エンジェ
ルズ!
﹂
﹁
おおおおおおおおおおお
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
﹂
と怒涛のような歓声
。
.
誰もが知らず知らずのうちに
、
道をあけていた
。
.
少女たちと、
二人のチンピラのあいだに道
ができる
。
﹁
あ、
あにきぃ
ぃ
ぃ
﹂
﹁
な、
なんだてめぇ
らは
!
﹂
.
二人のチンピラは声をあらげた
。
震えていたセ
︱
ラ服の少女は、
もう震えてはいなか
っ
た
。
ただ、
ただ、
驚きの表情を浮かべている
。
.
三人の少女たちは、
き
っ
っ
、
と二人のチンピラへと目を向けた
。
.
ごおっ
と少女たちの周りから風が巻き起こ
る
。
﹁
心のよごれたエンジェ
ルさん!
﹂
﹁
な、
なにぃ
﹂
.
少女たちは、
さっ
とステ
ィ
ッ
クをまっ
すぐに二人のチンピラへと
向けた
。
﹁
あなたに、
.
.
愛のきらめきよ!
﹂
﹁
うっ
、
うおっ
、
.
ぐわ
ぁ
あぁ
ぁ
・
・
・
ぐ
っ
、
ぐわっ
、
.
ぐわ
ぁ
あぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
・
・
・
﹂
﹁
あ、
あにきぃ
ぃ
ぃ
、
.
.
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
.
.
.
.
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
﹂