.
第5
章﹁
な、
なんだ、
あいつら
ぁ
﹂
.
.
暴走族の一人が怒りの声をあげた
。
手に持っ
た金属バッ
トを、
ガツン
、
と地面にたたきつける
。
﹁
俺たちより目立ちやが
っ
て﹂
﹁
あ、
あいつら・
・
・
﹂
.
隣にいた革のジャ
ンパ
︱
を着た男が震えた声をあげる
。
﹁
ま、
まずいよ
、
やつら最近、
よくテレビで見る
・
・
・
・
﹂
﹁
うるせぇ
﹂
と顔に赤い縞のペインテ
ィ
ングをした男がぺ
っ
とつばを地面へとはく
。
﹁
ぺっ
、
だからなんだっ
てんだよ
﹂
﹁
へっ
へっ
﹂
.
頭をモヒカンに刈り上げた男は
、
手に持っ
たナイフの刃を
、
ぺろり
、
となめる。
.
ぺろぺろ、
ぺろぺろ、
となめる
。
.
.
.
.
.
﹁
ん︱
、
いいじゃ
ねぇ
か
ぁ
。
ん?
.
たかが女ども三人
。
このナイフで
、
きれいにむいてやれば
ぁ
。
俺ぁ
、
むくのは得意だからよ
ぉ
。
りんごも
、
女も﹂
.
ナイフの刃を、
ぺろり
、
となめる。
ぺろぺろ
、
ぺろぺろ、
となめる
。
.
刃の先が、
ギラリ、
と光
っ
た。
.
ギラッ
、
ギラリ、
と。
.
ぺろぺろ、
ぺろぺろ・
・
・
.
ぺろぺろ、
ぺろぺろ・
・
・
﹁
ふ、
ふゅ
︱
、
へっ
、
へへへへへへへへ
、
たまらね
ぇ
﹂
.
ドドドドト、
.
ドドドドドドドドドドドドドド
、
というバイクの音
。
.
他の暴走族たちは顔を見合わせた
。
.
ドドド、
.
ドドドドドドドドドドドドドドドド
・
・
・
.
にやっ
とお互いに笑みを浮かべた
。
﹁
へへ、
そ、
そうだよな
﹂
﹁
へへへ﹂
﹁
そ、
そうだよ、
ガキども相手にしてるより
よ
っ
ぽどいいぜ。
へへ﹂
﹁
へへへ﹂
﹁
へへへへへへへ﹂
.
ぎらぎらとした目で丘の中腹へと目を向け
る
。
三人のエンジェ
ルの方へと
。
﹁
へへへへ﹂
﹁
楽しめそうだぜ﹂
.
ふっ
とミフティ
は笑っ
た。
.
.
.
.
.
.
・
・
・
﹁
おばかさんね﹂
.
くすっ
と笑みを浮かべ
、
ざん、
と地面をけっ
た。
アミュ
と、
チャ
︱
コも後につづく。
.
ざ、
ざざん、
と。
.
三人は、
ばっ
っ
っ
っ
っ
と、
両手を広げ、
ふわ
ぁ
っ
、
ゆるやかな弧をえがき
、
しゃ
︱
︱
︱
︱
︱
︱
っ
、
ばん、
と校庭に降り立
っ
た。
.
すっ
と身をかがめ、
ばん
、
と立ち上がる。
.
ドドドドドドド、
.
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドド
・
・
・
.
二十人の暴走族の目が三人へとそそがれる
。
.
ぎらぎら、
.
ぎらぎら、
とした目。
﹁
へっ
、
へへ﹂
﹁
へへへへへへへへ﹂
.
ミフティ
は、
くすっ
と笑
っ
た。
.
くすくす、
くすくす、
と笑う
。
﹁
なんだぁ
、
てめぇ
﹂
.
暴走族の一人が声をあげた
。
﹁
なにがおかしい
っ
てんだ、
こらぁ
﹂
.
ドドドドドドドド、
.
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
・
・
・
.
ミフティ
は、
すっ
と顔をあげた
。
.
くすっ
と笑う。
﹁
だっ
て︱
、
いけない子がこんなにい
っ
ぱい﹂
.
すっ
とスティ
ッ
クをま
っ
すぐに前へとのばした
。
.
ふっ
と前を見つめ、
﹁
いらっ
しゃ
い。
わるい子たちね
。
おしおきしてあげるわ
﹂
﹁
なにぃ
﹂
.
ドドド、
.
ドドドドドドドドドド
、
.
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ド
・
・
・
.
アミュ
と、
チャ
︱
コは
、
ミフティ
の後ろにいた
。
.
アミュ
はちらっ
とチャ
︱
コへと顔を近づけ、
﹁
な、
な、
なぁ
、
みゃ
︱
こっ
てさ﹂
.
小さな声でぼそぼそ。
.
ミフティ
に聞こえないように
、
ぼそぼそ、
ぼそぼそ
。
﹁
あのさ、
み
ゃ
︱
こっ
てさぁ
、
まじかるチ
ェ
ンジ︵
変身︶
するとさ
ぁ
、
ちょ
っ
と性格かわるよな
ぁ
﹂
.
チャ
︱
コはくすっ
と笑
っ
た。
﹁
はいですぅ
﹂
.
やっ
ぱり、
ぼそぼそ、
ぼそぼそ
。
.
ぼそぼそ、
くすくす。
﹁
そうですねぇ
。
車のハンドルにぎると
、
性格かわる人もいるです
ぅ
﹂
.
アミュ
は笑っ
た。
﹁
あ、
なるほどね﹂
﹁
はいですぅ
﹂
.
二人は、
くすくす、
くすくす
。
.
くすくす、
くすくす。
﹁
アミュ
、
チャ
︱
コ﹂
.
ドキッ
!
.
二人は、
しゃ
きん、
と背筋をのばした
。
﹁
は、
はい?
﹂
﹁
は、
はいですぅ
﹂
.
ミフティ
は、
ふっ
と笑い
、
﹁
いくわよ、
二人とも﹂
.
二人はちょ
っ
とだけ、
ほ
っ
。
.
お互いに顔を見合わせ
、
にっ
。
.
ざっ
と正面に向きなお
っ
た。
﹁
おう!
﹂
﹁
はいですぅ
﹂
.
ドドド、
.
ドドドドドドドドドド
、
とバイクがふたたび走り始める
。
.
ぐるぐる、
ぐるぐる、
と二十台近いバイクが
、
ぐるぐる
、
ぐるぐる・
・
・
ぐるぐる、
ぐるぐる
、
と校庭を回りはじめる
。
﹁
おらぁ
﹂
﹁
なめんじゃ
ねぇ
ぞ﹂
﹁
こらぁ
﹂
﹁
ひゃ
ははははははは﹂
.
バオッ
、
ザザッ
、
とそのうちの三台のバイ
クが向きを変え
、
ババア
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
アッ
、
とまっ
すぐに三人の方へと向か
っ
てきた。
﹁
ひゃ
っ
ほぅ
﹂
﹁
ひゃ
はは﹂
﹁
あぶねぇ
ぞ、
あぶねぇ
ぞ、
おらぁ
﹂
.
ミフティ
は、
足を開き
、
すっ
と半身に構え、
ステ
ィ
ッ
クをもっ
た右手を
、
ひゅ
ん、
と後ろへと引いた
。
.
アミュ
も、
チャ
︱
コも
、
スティ
ッ
クを、
ひゅ
ん、
と後ろへと引く。
.
三人の声がきれいにそろう
。
﹁
心のよごれたエンジェ
ルさん!
﹂
.
バアァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
、
.
バアァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ッ
、
と迫りくるバイク。
.
二十メ︱
トル、
十五メ
︱
トル、
十メ︱
トル・
・
・
﹁
ひゃ
はは﹂
﹁
おらおら﹂
﹁
ほらほら、
あひゃ
ひゃ
ひゃ
ひゃ
﹂
.
三人はふっ
と笑っ
た。
.
体を弓なりにしならせ
、
ふわっ
、
ばっ
とステ
ィ
ッ
クを前へと振りもどす
。
﹁
あなたに.
.
愛のきらめきよ!
﹂
.
バッ
、
.
・
・
・
と、
その瞬間、
三人のステ
ィ
ッ
クの先、
水平に交わ
っ
た二つのハ
︱
トから、
ぱあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
とした光が
、
まばゆいきらめきが放たれる
。
.
三人のスティ
ッ
クの先から
、
.
三つのスティ
ッ
クの先から
、
.
それぞれのハ︱
トの中から
、
バッ
、
ぱあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
と。
﹁
おおっ
﹂
﹁
うぉ
、
なんだ、
ありゃ
﹂
﹁
ひょ
お?
﹂
﹁
すげ・
・
・
うわ﹂
﹁
おわっ
﹂
.
周りで見ていたほかの暴走族たちの目もく
らむ
。
.
でも、
それは、
ふわっ
と包み込むような光。
.
やさしい、
やわらかな
、
きらめき。
.
その光が、
きらめきが
、
ぱあぁ
っ
、
しゃ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
と放たれる
。
.
まっ
すぐに。
.
バイクで迫りくる三人の暴走族たちに向か
っ
て。
まっ
すぐに。
﹁
やぁ
!
﹂
﹁
おりゃ
あ!
﹂
﹁
はいですぅ
!
﹂
.
ミフティ
が、
アミュ
が
、
チャ
︱
コが声をあげる
。
.
ふわっ
、
ばっ
、
しゃ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
・
・
・
.
走り抜ける光、
きらめき
。
.
まっ
すぐに。
.
ドドドド、
.
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
、
.
バアァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ァ
ッ
ッ
ッ
ッ
ッ
ッ
ッ
・
・
・
.
迫りくるバイク。
﹁
あっ
ひゃ
っ
ひゃ
っ
・
・
・
うおっ
﹂
﹁
うひょ
ひょ
ひょ
ひょ
・
・
・
おおおおおっ
っ
っ
﹂
﹁
ほらほらほら・
・
・
ぐご
ぉ
﹂
.
どん、
.
ぶわっ
と、
三台のバイクがステ
ィ
ッ
クのきらめきにつつまれる
。
.
ぶわっ
、
ぱあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
と。
﹁
ぐっ
、
ぐおおぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
ぉ
﹂
﹁
ぎいゃ
、
ぎゃ
ゃ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
﹂
﹁
うおおお、
うおおぉ
ぉ
ぉ
ぉ
、
あああああああああああああああ
っ
っ
っ
っ
っ
、
ああああああああああああ
っ
っ
っ
っ
っ
っ
っ
っ
っ
﹂
.
三台のバイクはその場で
、
ぴたっ
と動きを止めた
。
.
ふわぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
、
.
ぱあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
とバイクごと
、
三人の暴走族たちが明るい光につ
つまれる
。
.
光がふわっ
と球状にひろがる
。
.
やわらかな、
やさしい光
。
.
あたたかな両腕で、
つつみこまれるような
、
きらめき
。
.
まじかるスティ
ッ
クの先からは
、
なおも、
し
ゃ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
とまっ
すぐに光が放たれ続けている
。
﹁
おっ
、
おおおおおおおおおお
﹂
﹁
おぐぉ
あ、
ぐあああああああああ
﹂
﹁
ああああ、
ああああああああああああああ
ああああ
﹂
.
三人の体はまばゆい光にかくれ
、
はっ
きりと見えなくなる
。
.
と、
.
突然・
・
・
.
突然、
ふいに、
ぶわぁ
っ
と三人の暴走族たちの体から大きな黒い
影が
、
ぶばばばばばばぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
と上空に浮かび上が
っ
た。
.
ぶわっ
、
.
ぶばばばばばばばばばばば
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
と浮かび上がる。
﹁
な、
なんだ?
﹂
﹁
なんだあれは?
﹂
.
周りでぼうぜんと見ていたほかの暴走族た
ちも声をあげる
。
.
ぶわわっ
、
.
ぶばばばばばばばばばばばばばばば
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
。
﹁
ぐぎゃ
あ﹂
﹁
おごぉ
ぉ
ぉ
あ﹂
﹁
ぎゃ
うおぁ
﹂
.
それ、
は彼らの心をつつんでいた
、
﹃
よごれ
﹄
。
.
誰もが本来、
心の中にも
っ
ている愛と幸せの宝石をおおいかくし
ていた
、
虚無とカオス︵
混沌︶
。
.
その虚無とカオス︵
混沌︶
が黒い影となっ
て、
体の中から噴き出してきたもの
。
.
その﹃
よごれ﹄
は次々
に彼らの中から、
噴き出し
、
ぶわっ
と上空へと舞い上が
っ
た。
.
黒い影となっ
て。
.
どんどん、
どんどん、
と舞い上がり
、
やがて澄んだ空気の中へと飲
み込まれ
、
ふっ
と消えていく
。
.
彼らをつつんでいた光も
、
ふわっ
と空気の中に拡散し
、
消えていく
。
.
バタン、
バタン、
バタン
、
と彼らが乗っ
ていたバイクが次
々
に地面に倒れた
。
.
三人の暴走族は、
がく
っ
とひざをつき、
顔をがば
っ
と地面にふせ、
うずくま
っ
た。
﹁
うっ
、
うううううう﹂
﹁
ううう、
うううううう
﹂
﹁
う︱
︱
、
ううう︱
﹂
.
三人のすすり泣く声が辺りに響いた
。
﹁
お、
おい﹂
﹁
おい、
どうしたんだ?
﹂
﹁
お、
おい、
お前ら﹂
﹁
いっ
たい・
・
・
﹂
.
ほかの暴走族たちが声をかける
。
.
だが、
彼らは答えない
。
.
三人が三人とも、
地面に顔をふせたまま
、
小刻みに肩を震わせて
いる
。
﹁
うう、
ううう、
俺はなんて
・
・
・
なんてわるい奴だ
っ
たんだ﹂
﹁
うううう、
うううううう
﹂
﹁
うう︱
、
ううう、
なんてひどいことを
・
・
・
ひどいことをしていたんだ
︱
。
ゆ、
ゆるしてくれ
︱
﹂
.
ミフティ
は、
すっ
と顔をあげた
。
.
ほかの暴走族たちはぼうぜんと地面にうず
くまる仲間を見つめて
いる
。
.
いつのまにかすべてのバイクが止ま
っ
ていた
。
﹁
お、
おい﹂
﹁
じょ
、
じょ
うだんはやめろよ
﹂
﹁
な、
おい﹂
﹁
お、
おい、
お前たち﹂
.
・
・
・
・
・
・
﹁
ううううう、
ゆ、
ゆるしてくれ
︱
﹂
﹁
ううう、
うううううう
﹂
﹁
俺は・
・
・
俺はなんて
・
・
・
なんてひどい奴だ
っ
たんだ︱
・
・
・
う
、
うううううううう・
・
・
﹂
.
トトプトが、
パリポが
、
ナミクルが、
さぁ
っ
と丘の中腹から三人のエンジ
ェ
ルズのもとへと飛んでくる
。
.
ぷりんてぃ
んたちは、
ふわ
っ
と三人のすぐ後ろで止ま
っ
た。
﹁
ミフティ
、
アミュ
、
チ
ャ
︱
コ!
﹂
.
トトプトは言っ
た。
.
三人はさっ
と振り返る
。
.
トトプトが、
パリポが
、
ナミクルが、
こくん
、
とうなずいた。
.
三人も、
こくり、
とうなずきかえす
。
ばっ
と正面に向きなお
っ
た。
﹁
アミュ
!
.
チャ
︱
コ!
﹂
.
ミフティ
は言っ
た。
﹁
いくよ、
二人とも。
世界に愛のきらめき
よ
!
﹂
.
アミュ
とチャ
︱
コは笑
っ
た。
﹁
おう﹂
﹁
はいですぅ
﹂
.
ざん、
と大地をけり、
ば
っ
と三人は駆け出した
。
.
ミフティ
は正面に、
アミ
ュ
は左に、
チャ
︱
コは右に
、
ざん、
ばっ
、
ばば
っ
、
と。
.
わあぁ
、
.
わあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
と子供たちの歓声があが
っ
た。
.
校舎の三階の各教室の窓ぎわには
、
いまや子供たちがあふれてい
た
。
.
みんな窓から身を乗り出し
、
手を振り、
腕を振り上げて
、
歓声をあげる
。
﹁
いけ︱
、
がんばれ︱
﹂
﹁
やれ︱
、
やっ
ちゃ
え︱
﹂
﹁
わあ﹂
﹁
お姉ちゃ
んたち、
かっ
こいい!
﹂
﹁
すごぉ
い﹂
﹁
かっ
こいい﹂
﹁
いけ︱
﹂
.
残りの暴走族たちは、
は
っ
として顔をあげた。
.
ばああぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
と走っ
てくるエンジェ
ルたちをにらみつけた
。
﹁
てめぇ
ら﹂
.
チャ
︱
コは、
くすっ
と笑
っ
た。
﹁
いくですぅ
﹂
﹁
おらぁ
﹂
.
ドッ
、
バババ、
バババババババババ
ァ
、
と一台のバイクがチ
ャ
︱
コめがけて走り寄
っ
てくる
。
﹁
はいですぅ
﹂
.
ぱん、
とチャ
︱
コは地面をけ
っ
て、
ふわり、
と空中に浮かび上が
っ
た
。
.
ババ、
ザザザッ
、
とバイクはその下を通り
抜けていく
。
﹁
な、
なにぃ
?
﹂
.
チャ
︱
コは何メ︱
トルが上空で
、
くすっ
と笑
っ
た。
﹁
お・
ば・
か・
さん﹂
.
チャ
︱
コは、
くすくす
、
くすくす。
﹁
わるい子ですぅ
、
チャ
︱
コがおしおきしてあげるです
ぅ
。
お尻ペンペンです
ぅ
﹂
﹁
て、
てめぇ
﹂
.
男は、
ばっ
と上を見上げた
。
﹁
はいっ
﹂
.
チャ
︱
コはスティ
ッ
クを
、
ひょ
ん、
と振り下ろした
。
﹁
えいっ
﹂
﹁
ぐぎゃ
ああぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
﹂
.
ぴょ
ん、
ぴょ
ん、
ひょ
ん、
ひょ
こん、
とチャ
︱
コは空中をスキッ
プ
、
スキッ
プ、
飛び跳ねていく
。
.
スキッ
プ、
スキッ
プ。
﹁
えいっ
﹂
﹁
やあ﹂
﹁
ちょ
い﹂
﹁
はいですぅ
﹂
﹁
心のよごれたエンジェ
ルさんがいっ
ぱいです
ぅ
﹂
.
ひょ
ん、
ひょ
ひょ
ん、
えい
っ
、
とスティ
ッ
クを振り下ろす
。
﹁
はい、
愛のきらめきです
ぅ
﹂
.
ぱあっ
とした光。
﹁
ぐわぁ
﹂
﹁
おわぁ
ぁ
﹂
﹁
どわあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
、
どわわわわ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
﹂
﹁
おっ
しゃ
あ﹂
.
アミュ
は、
ざん、
ばっ
、
ばば、
ざっ
、
と右に左に駆け抜けていく
。
﹁
こ、
この女﹂
﹁
こらぁ
﹂
﹁
まちやがれ﹂
﹁
轢くぞ、
おらぁ
、
轢くぞ
、
轢くぞ、
おらぁ
﹂
.
バババ、
ザザ、
ドド、
ババ
、
バオッ
、
ババババ
、
バババババ、
と前から
、
後ろから、
右から
、
左から、
斜めから、
四方八方から
、
無数のバイクがアミ
ュ
に向かっ
て、
ドバォ
、
ババババババ
、
ドゴォ
、
っ
と迫
っ
てくる。
﹁
あひゃ
ひゃ
﹂
﹁
うひゃ
ひゃ
ひゃ
ひゃ
ひ
ゃ
ひゃ
、
ひゅ
う︱
﹂
.
ふっ
。
.
アミュ
は笑っ
た。
.
すばやく大地をけり、
ぱ
っ
、
ぱぱっ
、
ぱっ
、
とそのあいだを駆け抜
けていく
。
﹁
こ、
このアマぁ
﹂
﹁
うっ
、
うおお﹂
﹁
おおおおっ
﹂
﹁
うわっ
﹂
.
ドゴン!
.
・
・
・
とバイクとバイクがぶつかり合う
。
ドゴン
、
ドゴン、
ドゴン
、
と次々
に何台ものバイクとバイクがぶつ
かり合い
、
地面に転がる
。
.
乗っ
ていた暴走族たちも次
々
に地面へと投げ出される
。
﹁
ぎゃ
あ﹂
﹁
おわっ
﹂
﹁
おおっ
﹂
.
ドン、
ドン、
ドン、
と地面へと叩きつけら
れる
。
.
カラカラカラ、
と横倒しにな
っ
たバイクの車輪が空回りし
、
カラカラ
、
カラカラカラ、
と音をたてる
。
.
アミュ
は、
ふっ
と笑っ
た。
.
駆けながら、
さっ
とステ
ィ
ッ
クを上へとかざした
。
.
にっ
と白い歯を見せ、
﹁
こっ
ころの、
よっ
ごれた
、
エ・
ン・
ジェ
・
ル
・
さん﹂
.
ぱっ
と立ち止まり、
くる
っ
と後ろへと振り返
っ
た。
.
さっ
、
ざぁ
ぁ
ぁ
っ
とステ
ィ
ッ
クをばっ
と振り下ろし
、
しゅ
っ
と体の前で円を描くように
、
振り回した
。
﹁
ほりゃ
あ﹂
﹁
うぎゃ
ああああああああ
﹂
﹁
どわぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
あぁ
ぁ
ぁ
あ﹂
﹁
ほぎゃ
ぎゃ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
、
ぐわぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
﹂
﹁
こ、
このやろう﹂
.
ばっ
とアミュ
の真後ろで
、
一人の黄色いモヒカン頭の男が立ち上
が
っ
た。
両手にもっ
たナイフを
、
ぐわっ
と振り上げる
。
﹁
くたばりやがれ﹂
.
ざっ
と振り下ろされるナイフ
。
.
その刃が、
ギラリ、
と光る
。
﹁
このアマぁ
ぁ
ぁ
﹂
﹁
しまっ
・
・
・
﹂
﹁
へっ
へへへへ、
ざまぁ
・
・
・
﹂
﹁
えいっ
﹂
.
ドゴン!
.
次の瞬間、
アミュ
が後ろ向きに振り上げた
まじかるステ
ィ
ッ
クの先端のハ
︱
トが男の左ほおを捕らえた
。
﹁
おごあ﹂
.
モヒカン男は、
ぶわっ
と吹き飛ばされ、
二メ
︱
トルほど宙に浮かび
、
どだん、
と地面に叩きつけられた
。
.
カラン、
とナイフが何メ
︱
トルも離れた場所へと落ちる
。
﹁
ひっ
、
ひぇ
ぇ
え、
いで
ぇ
、
おわっ
﹂
.
モヒカン男は両手で左のほおを押さえ
、
地面の上で
、
ぐにゃ
ぐにゃ
とのたうちまわっ
た。
.
鼻から、
口の端から血が流れだしている
。
﹁
ひ、
ひえぇ
、
い、
いで
ぇ
よぉ
、
ひぃ
ぃ
ぃ
ぃ
ぃ
ぃ
﹂
.
アミュ
はスティ
ッ
クの先で
、
ぽりぽりと頭をかいた
。
.
男へと近づき、
﹁
あ、
わりぃ
、
あのさ﹂
.
頭を、
ぽりぽり、
ぽりぽり
。
﹁
あのさ、
俺、
まだちょ
っ
とかげんが分からなくてさ
。
.
まじかるチェ
ンジ︵
変身︶
してるときっ
てさ
、
力が何倍にもなっ
てるらしいんだよな。
それでな
、
あのな﹂
.
男は、
ただ、
ただ、
ひ
︱
、
っ
と声を上げながら
、
地面の上でぐにゃ
ぐにゃ
、
ぐにゃ
ぐにゃ
。
﹁
ひぃ
ぃ
ぃ
︱
︱
︱
、
いで
ぇ
、
ひでぇ
、
いでぇ
よ
ぉ
おお︱
︱
︱
︱
﹂
.
アミュ
は頭をぽりぽり
。
﹁
まっ
、
いっ
か﹂
.
ひょ
い、
とスティ
ッ
クの先を男のおでこへ
と当てた
。
﹁
ほいっ
﹂
.
ぱあっ
とした光。
﹁
ぐぎゃ
あああああぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
っ
っ
っ
﹂
﹁
やあっ
﹂
.
ミフティ
の声が響く。
﹁
はいですぅ
﹂
.
チャ
︱
コの声も響く。
﹁
おっ
しゃ
あ﹂
.
つづいて、
.
・
・
・
アミュ
の声。
.
いつのまにか・
・
・
.
いつのまにか、
ほとんどの暴走族が校庭に
倒れていた
。
いや、
倒れているのではない
。
.
ひざをつき、
地面に突
っ
伏し、
すすり泣いている
。
﹁
うっ
、
うううううう・
・
・
﹂
﹁
ううう、
なんて、
なんてひどいことを
・
・
・
﹂
﹁
おおおお、
うううう、
俺たちはなんてひどい
ことをしていたんだ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
﹂
﹁
うぉ
ぉ
ぉ
、
うううううう
ぅ
っ
っ
っ
﹂
﹁
ゆ、
ゆるして・
・
・
ゆるしてくれ
ぇ
﹂
.
残るはたっ
た一人だけ
。
.
黒い革のジャ
ンパ︱
を着て
、
手に金属バッ
トを持
っ
た男が、
たっ
た一人
、
校庭の中ほどに立ちすくんでいる
。
.
男はぼうぜんと、
地面に突
っ
伏している暴走族仲間の姿を見回し
ている
。
.
とても、
.
・
・
・
信じられない。
.
とても信じられない、
とい
っ
た表情で、
ぼうぜんと
。
.
ざっ
とミフティ
が一歩
、
前へと踏み出した。
男から十メ
︱
トルほど離れたところから
、
ざっ
と一歩。
.
アミュ
と、
チャ
︱
コは左右はなれたところ
から
、
その様子を見守っ
ている。
.
革のジャ
ンパ︱
の男は
、
はっ
として顔をあげた
。
.
ほんの一瞬、
怖れの色が男の顔に浮かぶ
。
.
だが、
男はすぐに、
ぎら
っ
とミフティ
をにらみつけた
。
﹁
なめやがっ
て﹂
.
ガンッ
、
と男は手に持
っ
た金属バッ
トで地面をたたいた
。
﹁
へっ
、
へへ﹂
.
ばっ
と金属バッ
トを頭の上へと振り上げる
。
﹁
へへへ、
へへへへへへへ
﹂
.
だっ
とミフティ
の方へと駆け出した
。
﹁
へへへ、
へへへへへ、
ヒ
ァ
ズ・
ジョ
ニ︱
︵
俺さま登場
ぉ
︶
!
﹂
.
ダダダ、
.
ダダダダダダダダダダダダダ
・
・
・
.
迫りくる最後の男。
.
ミフティ
は静かなまなざしで
、
男を見つめている
。
.
すっ
とまじかるスティ
ッ
クを体の後ろへと引いた
。
﹁
心のよごれたエンジェ
ルさん!
﹂
.
りん、
とした声が響く
。
.
ばっ
と体が弓なりにそり
、
ぱん、
とスティ
ッ
クが前へと振り戻される
。
﹁
あなたに.
.
愛のきらめきよ!
﹂
.
ぱあぁ
っ
とスティ
ッ
クの先から光
。
.
きらめきが、
しゃ
ああ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
とまっ
すぐに走り抜ける
。
﹁
ぐっ
、
ぐわっ
、
.
ぐぎゃ
あぁ
ぁ
ぁ
ぁ
.
ぐわぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
.
.
.
.
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
﹂