.
第5章︵
続︶
.
わぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
.
わあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
と歓声があが
っ
た。
.
小学生たちの歓声。
.
校舎の三階の窓ぎわに集ま
っ
た小学生たちが我先に身を乗り出し
、
歓声をあげている
。
﹁
やっ
たぁ
!
﹂
﹁
すごぉ
い﹂
﹁
お姉ちゃ
んたちぃ
﹂
﹁
かっ
こいいぃ
ぃ
ぃ
ぃ
ぃ
ぃ
ぃ
ぃ
﹂
﹁
まじかるエンジェ
ル﹂
﹁
まじかるエンジェ
ル﹂
﹁
まじかるエンジェ
ルぅ
ぅ
ぅ
ぅ
ぅ
ぅ
ぅ
﹂
.
アミュ
と、
チャ
︱
コが
、
ミフティ
のもとへと駆け寄
っ
てくる。
.
校庭には、
すべての暴走族たちが地面に突
っ
伏し、
ううう、
うううう
ぅ
ぅ
ぅ
ぅ
、
とすすり泣いている
。
.
わっ
、
.
わあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
、
とした歓声。
.
三人は顔を見合わせ、
こくり
、
とうなずいた。
.
さっ
と子供たちの方へと向きなおり
、
﹁
小学生の皆さん!
﹂
.
さっ
とスティ
ッ
クを頭の上にかかげ
、
大きく左右に振
っ
た。
くりかえし
、
くりかえし。
.
にこっ
と笑っ
た。
.
三人の声が、
.
三人のエンジェ
ルズの声が
、
きれいにそろう
。
﹁
小学生の皆さん!
.
あなたの幸せは
、
わたしと
、
ぷりんてぃ
んにおまかせよ
!
﹂
.
わぁ
ぁ
ぁ
ぁ
、
.
わああぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
っ
っ
っ
っ
。
.
さざなみのような歓声
。
.
トトプトと、
ナミクルは顔を見合わせ
、
にっ
こりと笑っ
た。
.
こくん、
とうなずきあう
。
.
さあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
と
、
空中を三人のもとへと飛んでいく
。
にこにこ
、
にこにこ、
と笑いながら
。
﹁
ミフティ
、
アミュ
﹂
.
トトプトは言っ
た。
﹁
チャ
︱
コ﹂
.
ナミクルは言っ
た。
.
パリポも、
くすっ
と笑
っ
た。
.
すっ
と、
トトプトと、
ナミクルの後を追おう
とした
。
.
だが、
.
そのとき・
・
・
﹁
えっ
﹂
.
パリポは、
はっ
として空中で動きを止めた
。
ば
っ
と顔を上へと向ける
。
.
空に・
・
・
.
校舎の真上の空に、
ぶわ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
と、
まっ
黒な雲が大きな染みのように浮
かび上が
っ
た。
.
その黒い雲が、
すうぅ
ぅ
ぅ
ぅ
ぅ
ぅ
ぅ
っ
と一
ヵ
所に集まっ
ていく。
﹁
あれ・
・
・
は﹂
.
パリポはつぶやいた。
.
ごくっ
と息を飲んだ。
.
三人のエンジェ
ルたちも
、
トトプトも、
ナミクルも
、
わあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
とした歓声の中で笑いあい
、
誰もその黒い雲に
、
黒い﹃
影﹄
に気づいていない
。
.
パリポ以外、
誰も。
.
ふいに・
・
・
.
ふいに、
パリポの頭に直接
、
声が響いてくる
。
.
それは、
通常の声ではない
。
シンパシ︱
︵
共鳴能力︶
。
.
.
ふっ
、
.
.
ふふふ、
.
.
ふふふふふふふ、
.
.
真の虚無は、
.
.
光さえも、
.
.
・
・
・
.
.
きらめきさえも.
.
呑み込むもの・
・
・
.
﹃
その声﹄
はパリポ以外の者には聞こえて
はいないようだ
っ
た。
.
黒い﹃
影﹄
は、
次第に人の形のようにな
っ
ていく
。
白い髪の小さな少女のような姿に
。
.
︱
︱
パリポには﹃
それ﹄
が分かっ
た。
.
きゅ
っ
と小さな手を内側へとまるめ
、
上空をき
っ
とにらむ。
.
声がつづいた。
.
.
ふふ、
.
.
エンジェ
ルか.
.
・
・
・
.
.
おもしろい。
.
.
すべての人々
は.
.
心に愛と.
.
幸せの宝石を.
.
やどした.
.
エンジェ
ル.
.
・
・
・
か。
.
.
ふふ、
.
.
そのエンジェ
ルを.
.
代表する.
.
少女たち。
.
.
愛の妖精どもの.
.
・
・
・
.
.
ぷりんてぃ
ん.
.
.
.
どもの力を.
.
分け与えられた.
.
少女たち。
.
.
ふふ、
.
.
ふふふ・
・
・
.
.
よく見せて.
.
もらっ
た。
.
.
おもしろい。
.
.
じつに・
・
・
.
.
いまは三人。
.
.
・
・
・
.
.
残りが三人.
.
・
・
・
か。
.
.
ふふ・
・
・
.
.
いいだろう。
.
.
まっ
てやる。
.
.
六人の少女、
.
.
全員が.
.
そろうまで、
.
.
まっ
てやろう。
.
.
じつに・
・
・
.
.
じつに.
.
おもしろい.
.
・
・
・
ふっ
、
.
.
うふふ、
.
.
ふふふふふふ.
.
・
・
・
﹁
あれは・
・
・
﹂
.
パリポはつぶやいていた
。
﹁
あれは、
虚無とカオス
︵
混沌︶
から生まれしものども
・
・
・
長老のお
っ
しゃ
っ
ていたとおり
・
・
・
﹂
.
.
そのとおり・
・
・
.
.
我が名は、
.
.
インリ・
リュ
︱
ト。
.
.
虚無と.
.
カオスから、
.
.
生まれし者の一人.
.
・
・
・
.
.
ふふ・
・
・
.
.
お前はほかの.
.
愛の妖精どもとは、
.
.
少し違っ
て.
.
いるようだな.
.
・
・
・
.
.
おもしろい。
.
.
いずれまた.
.
会うことになろう。
.
.
我が名を.
.
よく覚えて.
.
おくといい。
.
.
ふふ・
・
・
.
.
うふふふふ・
・
・
.
﹃
影﹄
は、
やがて、
ぶわ
っ
と少女の形をくずし
、
すうぅ
ぅ
ぅ
ぅ
ぅ
ぅ
っ
と空の中へと消えてい
っ
た。
.
後には、
さあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
と夕日に映える白い雲が流れていく
。
.
・
・
・
.
・
・
・
・
・
・
.
・
・
・
・
.
・
・
.
パリポは、
ふうっ
と息をついた
。
.
目の前では、
ミフティ
が、
アミュ
が、
チャ
︱
コが、
スティ
ッ
クを振りながら
、
子供たちの声援にこたえている
。
.
わあぁ
、
.
わあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
という子供たちの声援に
。
.
その脇では、
トトプトと
、
ナミクルが、
にこにこ
、
にこにこ、
と笑いながら
、
浮かんでいる
。
.
パリポは、
じっ
と目を伏せた
。
.
ふ︱
、
と息をつき、
正面へと向きなお
っ
た。
﹁
そうね、
時がせまっ
ている
・
・
・
長老のおっ
しゃ
るとおり﹂
.
くすっ
と笑っ
た。
﹁
必要なのは、
六つの光
、
きらめき・
・
・
でも
、
いまは・
・
・
いまは
、
ゆっ
くり、
のんびり
、
一歩一歩・
・
・
﹂
.
くすくす、
.
くすくす、
と笑っ
た。
﹁
そっ
、
あせっ
てもしかたない
。
いまは、
ゆっ
くり、
のんびり、
一歩一歩
、
ね﹂
.
ずっ
と遠くの方から、
パトカ
︱
のサイレンの音が聞こえた
。
.
音は次第に近づいてくる
。
﹁
おっ
と﹂
.
アミュ
はミフティ
とチ
ャ
︱
コへと目を向けた
。
﹁
やべぇ
な、
めんどうはごめんだ
。
いこうぜ﹂
.
ミフティ
と、
チャ
︱
コはうなずいた
。
﹁
ええ﹂
﹁
はいですぅ
﹂
.
アミュ
は笑っ
た。
﹁
トトプト、
ナミクル﹂
﹁
うん﹂
﹁
そうですね﹂
.
トトプトと、
ナミクルも答える
。
.
アミュ
と、
チャ
︱
コは
、
くるっ
と向きを変え
、
丘の方へと駆け出した
。
.
トトプトと、
ナミクルも
、
さあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
とその後を追う
。
﹁
うん﹂
.
ミフティ
は目を伏せた
。
.
すっ
と顔をあげる。
.
子供たちは、
わあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
、
わあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
、
と喜びの声をあげている
。
.
彼女は、
くすっ
と笑っ
た。
.
すっ
と子供たちに背を向け
、
駆け出そうとした
。
.
と、
﹁
エンジェ
ルのお姉ちゃ
ん﹂
﹁
えっ
?
﹂
.
ミフティ
は立ち止まり
、
振り返っ
た。
.
校舎の三階、
窓から身を乗り出した一人の
小さな男の子が
、
ぱあっ
と何かを投げた。
.
その小さな﹃
何か﹄
は
、
ふわあぁ
ぁ
ぁ
、
さあ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
、
と大きな弧をえがき
、
飛んでくる
。
.
彼女はあわてて左手を前へと出し
、
﹁
あっ
と
﹂
と少し前のめりになりながら
、
キャ
ッ
チした
。
.
えっ
・
・
・
.
彼女は手のひらを見つめた
。
.
﹃
それ﹄
はきれいにラ
ッ
ピングされた小さな丸いキ
ャ
ンディ
︱
だっ
た。
.
彼女は顔をあげ、
少年を見つめた
。
.
少年は、
にこにこ、
にこにこ
、
と笑いながら
、
手を振っ
ている。
﹁
お姉ちゃ
︱
ん、
ありがとう
。
また来てね︱
﹂
.
彼女は笑っ
た。
.
手のひらのキャ
ンディ
︱
を、
きゅ
っ
と握っ
た
。
.
目を伏せた。
.
ふっ
と顔をあげ、
少年へと目を向けた
。
﹁
うん﹂
.
さっ
とスティ
ッ
クを上にあげ
、
最後にもう一度
、
大きく左右に振っ
た。
﹁
ありがとう!
.
またね
!
﹂
.
わあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
、
.
わあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
という歓声
。
.
彼女はすっ
と校舎へと背を向けた
。
子供たちの歓声を背中に受け
て
。
.
彼女は、
タッ
と駆け出した
。
.
丘の上、
三人のエンジ
ェ
ルたちは、
しゅ
っ
、
し
ゅ
っ
、
しゅ
っ
、
とまじかるチ
ェ
ンジ︵
変身︶
をとき
、
もとの姿へともど
っ
た。
.
茶茶は地面の上に置いておいたテデ
ィ
ベアのぬいぐるみを抱きか
かえ
、
にこっ
と笑っ
た。
﹁
テディ
ちゃ
ん、
おまたせです
ぅ
﹂
.
そのまま三人は、
タッ
タッ
タッ
、
と丘の反対側の斜面を駆け下り
てい
っ
た。
.
ふっ
と立ち止まる。
﹁
ふ︱
、
やれやれ﹂
.
亜久亜はひざに両手をつき
、
ふ︱
、
と息をついた
。
すぐにぐいっ
と体を起こし
、
両手を組んで
、
頭の上へとあげる
。
.
ぐいっ
と背をそらし、
空を見上げた
。
﹁
さて、
と。
ミッ
ショ
ン
︵
状況︶
完了!
﹂
.
茶茶も笑っ
た。
.
ぬいぐるみを両手でき
ゅ
っ
と抱きしめ、
﹁
ミッ
ショ
ン完了ですぅ
﹂
.
美也子も笑っ
た。
.
丘の向こうからはまだかすかに子供たちの
歓声が聞こえてきてい
た
。
.
パトカ︱
のサイレンの音も
、
しだいに学校へと近づいてくる
。
.
後は万事、
うまくやっ
てくれるだろう。
.
美也子はようやく肩から力がぬけるのを感
じた
。
﹁
ところでさ、
トトプト
﹂
と亜久亜は言っ
た。
﹁
えっ
?
﹂
﹁
お前さ、
学校の周りに結界みたいのがあ
っ
て
、
電話とか通じないから
、
警察が呼べない、
っ
て言っ
てなかっ
たか
?
﹂
﹁
え、
あの・
・
・
﹂
.
トトプトは美也子のすぐ脇で
、
おろおろ。
.
おろおろ、
.
おろおろ、
としながら
、
周りを見回した。
﹁
そうですぅ
、
言っ
てたです
ぅ
﹂
.
茶茶も笑っ
た。
﹁
えっ
、
でも、
さっ
きは本当に
・
・
・
﹂
.
パリポはだまっ
てトトプトを見つめていた
。
.
くすっ
と笑っ
た。
﹁
トトプト﹂
.
パリポは言っ
た。
﹁
だめじゃ
な︱
い、
変なこと言
っ
ちゃ
あ﹂
﹁
え、
で、
で、
で、
でも
ぉ
﹂
.
トトプトは空中で小さなぷにぷにお手
々
を、
ぱたぱた
、
ぱたぱた。
.
両足も、
くんくん、
くんくん
、
と振っ
た。
﹁
ほ、
ほ、
ほんとだよぉ
、
ほんとにさっ
きはぁ
・
・
・
﹂
﹁
まっ
たくトトプトは、
う
っ
かりん坊だなぁ
﹂
.
亜久亜は笑っ
た。
﹁
うっ
かりん坊ですぅ
﹂
.
茶茶も笑っ
た。
.
トトプトはナミクルへと目を向け
、
﹁
お、
お姉ちゃ
あ︱
ん﹂
﹁
お姉ちゃ
んじゃ
ないでし
ょ
﹂
﹁
だっ
だっ
てぇ
﹂
.
美也子は、
くすっ
と笑
っ
た。
.
みんなが、
くすっ
と笑
っ
た。
.
ただ一人、
パリポをのぞいて
。
.
パリポは赤く染まりはじめた空を見上げた
。
.
さあぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
と白い雲が流れていく
。
﹁
さて、
と﹂
.
亜久亜は笑っ
た。
﹁
それじゃ
、
俺、
今日はもう直接
、
自分のうちに帰るわ
。
ところでさ
﹂
.
彼女は美也子の方へと目を向けた
。
﹁
ところで、
みゃ
︱
こさ
ぁ
﹂
﹁
えっ
?
﹂
.
美也子は亜久亜へと目を向けた
。
.
亜久亜は、
にっ
と笑い
、
﹁
ところで、
みゃ
︱
こ、
どうすんだ
?
.
今回でもう
、
まじかるエンジェ
ルやめるっ
て言っ
てたけど
﹂
﹁
あっ
、
その・
・
・
﹂
.
トトプトはびっ
くりして美也子の方へと振
り返
っ
た。
﹁
えっ
?
.
えっ
?
.
ほんと
?
﹂
.
美也子は亜久亜をちら
っ
と見た。
白い歯を見せて
、
にっ
と笑っ
ている
。
.
もう・
・
・
.
手をひらき、
にぎっ
ていたキ
ャ
ンディ
︱
を見つめた
。
.
後ろからは、
まだかすかに子供たちの歓声
が聞こえてきている
。
.
くりかえし、
くりかえし
。
.
顔をあげると、
亜久亜はまだ
、
にっ
と笑っ
ていた
。
.
なんだか・
・
・
.
なんだか心の中を見透かされているようで
、
ち
ょ
っ
とだけ、
しゃ
くだ
っ
た。
.
もう・
・
・
.
でも・
・
・
﹁
ま、
まあね﹂
.
美也子は言っ
た。
こほん
、
と咳払い。
.
ちょ
っ
とだけ顔を上へと向けた
。
.
空はどこまでも、
ぱあ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
と晴れわた
っ
ている。
.
きゅ
っ
とキャ
ンディ
︱
をにぎっ
た。
.
誰もが美也子を見つめている
。
.
すっ
とみんなを見回し
、
﹁
ま、
まあね﹂
.
こ、
こほん、
と咳払い
。
﹁
ま、
まあね・
・
・
えっ
と・
・
・
その・
・
・
もう少し
・
・
・
もう少しだけ
、
つづけても・
・
・
えっ
と・
・
・
まあ、
いいかな
っ
ていうか・
・
・
﹂
.
亜久亜は笑っ
た。
﹁
頼むぜ、
リ︱
ダ︱
﹂
.
茶茶も笑っ
た。
﹁
美也子お姉さま、
これからもよろしくです
ぅ
﹂
.
パリポと、
ナミクルも笑
っ
た。
﹁
よろしくね、
美也子さん
﹂
﹁
よろしく﹂
.
トトプトは、
本当にほ
っ
とした様子。
にこっ
と笑い、
﹁
ありがとう、
美也子ち
ゃ
ん﹂
.
美也子はなんだか気恥ずかしくな
っ
た。
.
顔がちょ
っ
と赤くなるのを感じた
。
﹁
ば、
ばかね﹂
.
思わず、
目をふせていた
。
﹁
もう、
みんなおおげさなんだから
。
もう少しだけ
・
・
・
本当に
、
もう少しだけよ・
・
・
﹂
.
亜久亜は笑っ
た。
﹁
分かっ
てるっ
て﹂
.
茶茶も笑っ
た。
﹁
はいですぅ
﹂
.
もう・
・
・
.
調子いいんだから・
・
・
.
美也子は顔をあげた。
.
みんな、
にこにこ、
にこにこ
、
と笑っ
ている
。
.
美也子も、
思わず、
くす
っ
と笑っ
ていた。
.
亜久亜も、
茶茶も、
パリポも
、
ナミクルも、
トトプトも
、
みんな、
みんな
、
知らず知らずのうちに顔を見合わせ
、
くす
っ
と笑っ
た。
.
知らず知らずのうちに
、
全員が、
.
くすくす、
.
くすくす、
と笑っ
ていた
。
.
くすくす、
.
くすくす、
と。
.
・
・
・
・
・
・
﹁
さ、
それじゃ
﹂
.
亜久亜は言っ
た。
﹁
俺、
もう帰るわ。
じゃ
な﹂
.
パリポの方へと振り返り
、
﹁
パリポ﹂
.
パリポはうなずいた。
﹁
ええ﹂
.
パリポは他のみんなを見回した
。
﹁
それじゃ
、
皆さん、
また﹂
﹁
うん﹂
.
・
・
・
と、
誰もが答える
。
﹁
まじかるロ︱
ド、
転移
﹂
.
パリポの声が響く。
.
ひゅ
ん、
と亜久亜とパリポの姿がその場か
ら消えた
。
﹁
それじゃ
、
美也子お姉さま
、
また﹂
.
茶茶は笑っ
た。
﹁
うん﹂
.
美也子は答える。
.
ナミクルはトトプトを見つめ
、
﹁
トトプト、
それじゃ
、
し
っ
かりやんなさい﹂
﹁
うん・
・
・
お姉ちゃ
・
・
・
ナミクルも﹂
﹁
ええ﹂
.
ナミクルはうなずいた
。
﹁
まじかるロ︱
ド、
転移
﹂
.
ひゅ
ん、
と茶茶とナミクルの姿が消える
。
.
美也子は、
ふ︱
、
と息をついた
。
.
空はもうすっ
かり赤く染ま
っ
ている。
.
子供たちの声もまだ聞こえてきている
。
﹁
トトプト﹂
と美也子は言
っ
た。
﹁
ねぇ
、
ところでさぁ
﹂
﹁
うん﹂
.
トトプトは美也子を見つめ
、
﹁
なに?
﹂
﹁
うん、
あのさ、
ところで
、
ここどこなの?
﹂
﹁
えっ
?
.
九州の山の中だけど
﹂
﹁
きゅ
︱
しゅ
︱
?
﹂
.
美也子はちょ
っ
とあきれ顔
。
﹁
うん、
それがどうしたの
?
﹂
.
彼女はくすっ
と笑っ
た
。
﹁
ま、
いいけどね。
あんた
っ
て、
ほんと、
働き者ね
。
じゃ
、
私たちも帰ろ
﹂
.
トトプトは笑っ
た。
﹁
うん!
﹂
.
静かな山あいにトトプトの声が響いた
。
﹁
まじかるロ︱
ド、
転移
!
﹂